【有田焼】古伊万里と伊万里の違いと骨董品としての魅力

目次

【結論】古伊万里と伊万里の決定的な違い

古伊万里と伊万里焼の違いを知りたい方のために、まず結論から明確にお答えします。この2つには以下の4つの決定的な違いがあります。

時代区分の違い

古伊万里

江戸時代(17世紀~18世紀頃)に製作

現代の伊万里焼

明治時代以降から現在まで

製作地の違い

古伊万里

佐賀県有田町とその周辺で製作された有田焼

現代の伊万里焼

佐賀県伊万里市大川内山で製作

価値・希少性の違い

古伊万里

骨董的価値が高く、世界的に「オールドイマリ」として評価

現代の伊万里焼

優れた伝統工芸品として評価

用途・背景の違い

古伊万里

輸出用の贅沢品として製作、ヨーロッパ王侯貴族に愛用

現代の伊万里焼

献上品だった鍋島焼の技法を継承する高級磁器

つまり、「古伊万里」とは江戸時代に有田で作られ、伊万里港から出荷された歴史的な有田焼を指し、現代の「伊万里焼」とは全く別物なのです。

古伊万里とは|有田で生まれ世界を魅了した日本初の磁器

日本磁器の起源と有田の役割

古伊万里の歴史は、1616年に朝鮮人陶工の李参平が佐賀県有田町の泉山で良質な陶石を発見したことから始まります(※1)。これにより日本初の磁器が誕生し有田は日本磁器の聖地となったのです。

※1 佐賀県立九州陶磁文化館「有田焼の歴史」https://saga-museum.jp/museum/kyushu/

伊万里港から世界へ「IMARI」ブランドの誕生

有田で製作された磁器は、当時の交通事情により伊万里港から出荷されました。このため、世界では製作地の有田ではなく、出荷港の伊万里の名前で知られるようになります。

1650年、オランダの東インド会社が有田焼を買い付け始めたことで、古伊万里はヨーロッパの王侯貴族を中心に広がっていきます。

特にドイツのアウグスト強王は古伊万里に魅了され、手に入れるため、自分の兵隊を売り払ったほどの熱狂ぶりでした。

世界が称賛した技術力と美しさ

古伊万里の最大の特徴は、軽く硬質で耐久性に優れ、かつてヨーロッパの貴族から「白い金」と称えられたほどの美しい白色でした。

この透明感のある白磁に、藍色の染付や金襴手と呼ばれる絢爛豪華な装飾が施されました。

代表的な様式と技法

古伊万里は製作時期により以下の主要な様式に分類されます。

初期伊万里(1610年代~1640年代)
  • 藍色一色による素朴な染付が特徴
  • 市場の出回りが比較的少なく、希少性が高いため高値が付きやすい
柿右衛門様式(1650年代~)
  • 「柿右衛門赤」と呼ばれる深い赤色を用いた鮮やかな色絵
  • 花鳥風月をモチーフとした繊細で上品な装飾
金襴手様式(17世紀後半~)
  • 金彩を贅沢に用いた豪華絢爛な装飾
  • 元禄時代の豊かな文化を反映した絢爛豪華なデザイン

現代の伊万里焼とは|鍋島藩「秘窯の里」の技を継承

大川内山「秘窯の里」の歴史的背景

現代の伊万里焼の源流は、江戸時代に大川内山に設置された鍋島藩の御用窯にあります。四方を山に囲まれ、さらに磁器の生産に必要な豊かな水を確保する川が中央に流れるこの地は、まさに磁器製作の理想的な環境でした。

肥前藩では当時最新の科学技術であった「磁器」の生産法や、中国の職人から習得した絵付け技法を極秘にするため、優秀な有田焼の職人を選び伊万里の大川内山地区に集約させました。

この秘密主義から「秘窯の里」と呼ばれるようになったのです。

鍋島焼から現代伊万里焼への発展

鍋島焼は将軍や朝廷への献上品として製作され、呉須染付や、呉須染付に色付けをした色鍋島と呼ばれる焼き物が特徴でした。

明治維新後、政府の窯が取り潰されると、職人たちは独立して民間向けの磁器製作を開始しました。

現代伊万里焼の特徴

現在の伊万里焼は、鍋島藩窯の伝統美や技術を受け継ぎ、新しい色鍋島の確立を図っています。主な特徴は以下の通りです。

  • 呉須染付:コバルトを主成分とした美しい藍色の絵付け
  • 色鍋島:染付の上に赤・黄・緑の上絵を施した技法
  • 繊細で上品な意匠:花鳥風月をモチーフとした日本画的な表現

古伊万里と伊万里の具体的な違い|5つの見分けポイント

製作年代による判別法

光沢の違いで年代を見分ける

古伊万里は江戸時代初期に作られたことから長い年月を経たことで表面に歴史を感じるくすみ感が現れ、光沢は控えめになります。

一方、現代の伊万里焼は新しい光沢を保っています。

形状の歪みによる判別

古伊万里は職人が窯を焚き、温度管理なども職人の肌感で行われていたため、焼き上がりが均一ではありません。

そのため、ひずみやゆがみが生じており、そのいびつさを楽しむ焼き物でもあります。

市場価値の違い

古伊万里の市場相場

ヤフオクの落札データを見ると、古伊万里の平均落札価格は10,713円から120,497円と幅広く、希少な作品では数十万円から数百万円での取引も珍しくありません。

宝暦や元禄(江戸中期)に量産された希少性の低いアイテムは1.5~2万円前後での取引が当たり前になってきましたが、初期伊万里や柿右衛門様式などの優品は依然として高値で取引されています。

現代伊万里焼の価格帯

現代の伊万里焼では、プレートが3,300円~5,500円、マグカップが3,850円程度の価格帯で販売されており、実用品として購入しやすい価格設定となっています。

希少性と入手可能性

古伊万里

限られた数しか現存しない希少品

現代伊万里焼

大川内山地区には現在31件もの窯元が軒を連ね、継続的に製作されている

裏印(落款)の有無

古伊万里の高台内に裏印(落款・陶印)があるものは高額買取されやすいです。

特に裏面に『福』が描かれたものは現在柿右衛門窯が商標登録しており、価値が高い古伊万里である可能性があります。

用途と制作背景

古伊万里

輸出用贅沢品、宮殿装飾用インテリア

現代伊万里焼

日用品から芸術作品まで幅広い用途

骨董品としての古伊万里・伊万里の魅力と価値

投資価値としての古伊万里

古伊万里は骨董品市場において独特の地位を占めています。

古伊万里の相場は年々下落の傾向にあるのが実情です。というのも、骨董品コレクターの高齢化に伴いどんどんと需要が低くなっていくからという課題もある一方、古伊万里は日本国内に留まらず海外でも「オールドイマリ」として人気が高く、特にヨーロッパの市場で需要が高いのが特徴です。

コレクションとしての魅力

歴史的価値の重み

古伊万里が高いのは伊万里焼の中でも初期の方に作られたということもあり、市場での希少価値が高まっているからです。

400年以上前に作られた作品が現代まで残っているという事実そのものが、大きな価値を持っています。

芸術性の高さ

古伊万里の魅力は単なる古さだけではありません。

江戸時代の職人技術の粋を集めた作品は、現代の工業製品では再現できない温かみと個性を持っています。

真贋鑑定のポイント

骨董品として古伊万里を収集する際は、以下の点に注意が必要です。

◎ 本物の特徴

  • 表面の光沢にムラがあったりくすみ感が見られたりすると本物の可能性があります
  • 平らな場所に置き、ゆがみが見られるのは古伊万里の大きな特徴
  • 使用や保管の際についた小さな傷が表面に見られます

✕ 偽物の特徴

  • 不自然なテカりや新しさを感じる光沢
  • 機械的な均一さ
  • 故意に付けられたような不自然な傷

現代生活で楽しむ古伊万里・伊万里の魅力

飲食店での演出効果とブランディング

古伊万里や伊万里焼は、飲食店で利用することでブランディングが可能です。

格調高い品のある佇まいを感じさせるこれらの器は、料理の品格を一段と高め、店舗のブランディングに大きく貢献します。

高級感の演出

ヨーロッパの貴族から「白い金」と称えられたほどの美しい白色が特徴の古伊万里系の器は、どのような料理も上品に見せる効果があります。

特に懐石料理や会席料理においては、その歴史的背景も含めて話題性を提供できます。

料理との相性

白い器のため料理が映えやすく、和食だけでなく料理のジャンルを問いません。この汎用性の高さが、多くの飲食店で愛用される理由です。

日常使いでの上質な時間の創造


現代の伊万里焼は、日常使いにも適した耐久性を持っています。

硬質な磁器は耐久性が高く、現代では日常的な器として生活に馴染んでいます。

特別感のある食事体験

有田焼には手書きらしい風合いで温かさも感じる味わいがあり、毎日の食事を特別なものに変える力があります。

現代のライフスタイルに合わせた新しいデザインにも積極的に取り組んでいる窯元も多く、伝統と現代性の融合を楽しめます。

インテリアとしての価値

古伊万里は実用品としてだけでなく、宮殿を装飾するインテリアとして用いられていたという歴史があります。

現代でも、リビングや玄関のディスプレイとして飾ることで、空間に格式と品格を与えます。

贈答品としての格式

伊万里焼は、その歴史的背景と品質の高さから、重要な贈答品としても重宝されています。

縁起の良い瓢箪が描かれているので、お祝いの席にも活躍しますような意匠も多く、用途に応じて選択できます。

古伊万里・伊万里を購入・査定する際の注意点

信頼できる業者選びのポイント

古美術ラウンジが実施した調査によると、査定額の透明性・明確さ(21.74%)が最重視され、単純な「高額査定への期待」よりも「透明性・明確さ」が最重要視されていることが明らかになりました。

重要な選定基準

  1. 査定額の透明性・明確さ
  2. 対応の丁寧さ・安心感
  3. 実績・経験の豊富さ

消費者は価格面だけでなく、信頼性を多角的に判断しており、特に「だまされるのではないか」という不安が根強いため、業者選びでは専門知識と誠実さを重視することが重要です。

適正価格の判断方法

相見積もりの重要性

古伊万里には固定した相場がなく、さらに言えば査定員の好みも査定額に反映されるため、相見積もりは必須です。

複数の専門業者に査定を依頼することで、より適正な価格を把握できます。

価値を左右する要因

古伊万里の価値は以下の要素で決定されます。

  • 製作年代(初期伊万里ほど高価)
  • 様式(柿右衛門、金襴手など)
  • 保存状態
  • 裏印の有無
  • サイズや希少性

保管とメンテナンス

適切な保管環境

  • 直射日光を避けた場所での保管
  • 急激な温度変化を避ける
  • 湿度管理に注意

取り扱い上の注意点

  • 薄く華奢な印象の伊万里焼・有田焼ですが、どちらも陶石から作られた磁器のために耐久性に優れていますとはいえ、古い作品は慎重な取り扱いが必要
  • 定期的な清拭でほこりを除去
  • 重ね置きは避け、個別に保管

まとめ|400年の歴史が生んだ不朽の価値

古伊万里と伊万里の違いを理解することで、それぞれの価値と魅力がより明確になりました。

古伊万里は江戸時代に有田で作られた歴史的な磁器であり、現代の伊万里焼は献上品の技法を継承する優れた工芸品という、それぞれ独自の魅力を持っています。

古伊万里の永続的価値

古伊万里が高いのは歴史的価値・希少性の高さにありますが、それ以上に400年間変わらぬ美しさと品格こそが真の価値といえるでしょう。

世界が認めた「白い金」の輝きは、現代でも多くの人々を魅了し続けています。

現代伊万里焼の可能性

一方で現代の伊万里焼は、伝統の中に、女性独自の思考で新風を吹き込み、手作りの器を手懸けていますように、伝統を基盤としながらも現代性を取り入れた進化を続けています。