【保存版】知っておきたい日本を代表する版画家10選

はじめに – 版画作家とその魅力

版画は、彫刻された版を用いて複数の作品を生み出す芸術表現です。木版画、銅版画、リトグラフなど多様な技法が存在し、それぞれが独自の美的価値を持っています。近年、版画作品は絵画に比べて手に入れやすい価格帯でありながら、資産としての価値も注目されています。

版画作品が注目される理由は、その複製性にあります。一つの版から複数の作品が生まれるため、油彩画と比較して入手しやすく、コレクターの裾野が広がっています。特に著名な作家の初摺り作品や限定部数の作品は、時間の経過とともに価値が上昇する傾向にあります(※1)。

オークション市場では、版画作品の取引が活発化しています。特に日本の新版画や西洋のリトグラフ作品は、国内外のコレクターから高い評価を受けており、投資対象としても注目を集めています。版画市場の平均落札価格は作家によって数万円から数百万円まで幅広く、入門者からベテランコレクターまで楽しめる分野となっています(※2)。

本記事では、日本と西洋を代表する版画作家10人を取り上げ、その作品の特徴と市場価値、資産としての魅力を詳しく解説します。

※1 Yahoo!オークション 版画カテゴリ落札相場 https://auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/ ※2 オークファン 版画市場データ https://aucfan.com/

日本を代表する版画作家10選

1. 棟方志功 – 世界のムナカタと呼ばれた木版画の巨匠

棟方志功(1903年-1975年)は、青森県出身の版画家で、「世界のムナカタ」として国際的に高く評価されています。当初は油絵画家を目指していましたが、川上澄生の版画に感銘を受け、木版画の道に進みました(※3)。

彼のキャリアにおける転機は1936年の「大和し美し」の発表で、この作品により木版画家としての地位を確立しました。1942年からは「板画」という独自の表現を用い、絵と文字を融合させた新たな技法を開発。1956年には国際版画大賞を受賞し、「世界のムナカタ」としての名声を獲得しました(※3)。

代表作には「二菩薩釈迦十大弟子」(1939年)、「女人観世音板画巻」(1949年)、「華狩頌」(1954年)などがあり、女性像や観音様を特に美しく描き出した作品が多く希少価値の高い美術品として評価されています。

市場価値と高騰状況

棟方志功の作品は、オークション市場で活発に取引されています。一部の作品は数百万円以上の価値があるとされ、美術市場においても重要な位置を占めています。彼の作品は生涯にわたって多くの評価を受け、文化勲章も授与されました。日本国内はもちろん、国際的にも広く収集されています(※4)。

詳しくは以下の記事もご参照ください。 関連記事: 棟方志功はなぜ人気?

※3 日晃堂コラム「国内外の有名な版画作家11人の作品とその魅力を紹介」https://nikkoudou-kottou.com/blog/painting/15116 ※4 同上

2. 葛飾北斎 – 世界が認めた浮世絵の巨匠

葛飾北斎(1760年-1849年)は、江戸時代を代表する浮世絵師で、「富嶽三十六景」で世界的に知られています。90年の生涯で様々な名作を世に送り出し、今なお世界で最も有名な日本人画家のひとりです(※5)。

「富嶽三十六景」は、富士山を様々な角度から描いた風景画シリーズで、特に「凱風快晴」(通称「赤富士」)や「神奈川沖浪裏」は、西洋の印象派画家たちに多大な影響を与えました。北斎の作品は、西洋の遠近法と日本の伝統的な描法を融合させた革新的な表現で知られています(※5)。

市場価値と高騰状況

葛飾北斎の浮世絵は、日本だけでなく海外でも極めて高い評価を受けています。特に初摺りの作品や保存状態の良い作品は、数十万円から数百万円で取引されることも珍しくありません。近年では、海外コレクターからの需要も高まっており、オークション市場での落札価格が上昇傾向にあります(※6)。

詳しくは以下の記事もご参照ください。 関連記事: 葛飾北斎の価値

※5 三越伊勢丹オンラインストア 浮世絵版画特集 https://www.mistore.jp/shopping/feature/living_art_f2/art92_l.html ※6 ヒカカク「歌川広重 浮世絵・作品の買取相場・価値まとめ」https://hikakaku.com/blog/all-category/painting-works-of-art/9099/

3. 歌川広重 – 叙情的風景版画の第一人者

歌川広重(1797年-1858年)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、風景画を得意としました。本名は安藤重右衛門ですが、過去には安藤広重とも呼ばれていました(※7)。

代表作「東海道五十三次」は、東海道にある53の宿場を描いた連作で、叙情的な風景描写により高い評価を受けています。また、「名所江戸百景」では江戸の風景を詩的に表現し、特に「大はしあたけの夕立」や「亀戸梅屋舗」はゴッホが模写したことでも有名です(※8)。

広重の作品の特徴は、「広重ブルー」と呼ばれる藍色の美しさにあります。当時高価だったプルシアンブルー(ベロ藍)を巧みに使用し、独特の色彩表現を確立しました(※7)。

市場価値と高騰状況

歌川広重の浮世絵は、葛飾北斎と並んで日本を代表する浮世絵師として国内外で高く評価されています。ヨーロッパやアメリカでは、大胆な構図と藍色の美しさで特に人気が高く、印象派の画家たちに影響を与えたことでも知られています。市場では、作品の状態や版の違いによって価格が大きく異なりますが、初摺りの良品は高額で取引されています(※7)。

※7 ヒカカク「歌川広重 浮世絵・作品の買取相場・価値まとめ」https://hikakaku.com/blog/all-category/painting-works-of-art/9099/ ※8 三越伊勢丹オンラインストア 浮世絵版画特集 https://www.mistore.jp/shopping/feature/living_art_f2/art92_l.html

4. 川瀬巴水 – 近代風景版画の詩人

川瀬巴水(1883年-1957年)は、美しい日本の風景を繊細に描いた近代風景版画の重鎮です。1918年に版画家としてのキャリアをスタートさせ、版元・渡辺庄三郎との出会いが大きな転機となりました(※9)。

巴水は渡辺と共に新版画運動を推進し、浮世絵の伝統を継承しつつ現実に即した風景描写を探求しました。初期の傑作「塩原三部作」は栃木県塩原の風光明媚な風景を捉えたものです。特に「旅みやげ第一集 若狭 久出の浜」は34回の摺りを重ねて完成した、技術的にも芸術的にも高いレベルの作品です(※9)。

市場価値と高騰状況

川瀬巴水の版画は、没後も引き続き高く評価されています。オークション市場では平均落札価格が約2万円から10万円の範囲で推移していますが、初摺りや希少な作品は数十万円から50万円で取引されることもあります(※10)。海外、特にアメリカでの人気が高く、後摺り作品も含めて活発に取引されています。

※9 日晃堂コラム「国内外の有名な版画作家11人の作品とその魅力を紹介」https://nikkoudou-kottou.com/blog/painting/15116 ※10 Yahoo!オークション 川瀬巴水 版画 落札相場 https://auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/closedsearch/川瀬巴水 版画/0/

5. 吉田博 – 世界が熱狂する風景版画の巨匠

吉田博(1876年-1950年)は、川瀬巴水、伊東深水らと並ぶ新版画を代表する版画家・洋画家です。欧米を巡り、浮世絵を始めとする日本の木版画に対する評価の高さを実感し、洋画の技法を取り入れた新しい木版画制作に取り組みました(※11)。

1925年以降、自身の工房で独自の木版画制作を開始し、グランドキャニオンやマッターホルン、ヴェネチア、エジプトなどに取材した傑作を生み出しました。その本格的な洋画からくる確かな描写力と、伝統的な木版技術を融合させた作品は高い評価を得ており、特に色彩に対する評価が高く、その微妙な陰影や透明感を表現するため、時には96度摺りという驚くべき手間がかけられています(※11)。

市場価値と近年の高騰状況

吉田博の作品は近年、国際的に再評価が進んでおり、市場価格が急上昇しています。オークション市場では、平均落札価格が約7万円程度ですが、自摺印が押された初摺り作品は特に高額で、完品であれば300万円から400万円に達するものもあります(※12)。海外、特にアメリカでの人気が高く、山岳風景や桜を描いたシリーズは特に高値で取引されています。

※11 山田書店美術部「吉田博」https://www.yamada-shoten.com/onlinestore/art.php?artist=%E5%90%89%E7%94%B0%E5%8D%9A ※12 テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」吉田博の版画13枚 https://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20240723/03.html

6. 橋口五葉 – 大正の歌麿と称された美人画の名手

橋口五葉(1881年-1921年)は、明治末から大正期にかけて活躍した版画家で、「大正の歌麿」と形容される美人画を残しました。1905年に東京美術学校西洋画科を首席で卒業し、夏目漱石の『吾輩ハ猫デアル』の装丁を手がけたことで注目を集めました(※13)。

1915年、版元・渡辺庄三郎と協力して新版画運動の記念すべき第一作「浴場の女」を制作しました。1918年以降は独立し、自ら彫師と摺師を抱えて制作に取り組みましたが、1921年に41歳で早世。残した版画作品は渡辺版も含めてわずか14点という希少性が特徴です(※13)。

代表作「髪梳ける女」は、喜多川歌麿の美人画とラファエル前派の影響を受けた作品で、浮世絵研究で学んだ雲母を使った背景技法と、洋画の影響が融合した傑作です(※14)。

市場価値と希少性

橋口五葉の作品は、その希少性から高く評価されています。オークション市場では平均落札価格が約2万円から3万円の範囲ですが、保存状態の良い作品は数十万円から15万円以上で取引されることもあります(※15)。作品数が極めて少ないため、市場に出回る機会も限られており、コレクターからの需要は常に高い状態が続いています。

※13 山田書店美術部「橋口五葉」https://www.yamada-shoten.com/onlinestore/art.php?artist=%E6%A9%8B%E5%8F%A3%E4%BA%94%E8%91%89 ※14 Gallery翠「橋口五葉」https://gallery-sui.com/page_japanesediction/橋口五葉はしぐちごよう/ ※15 Yahoo!オークション 橋口五葉 版画 落札相場 https://auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/closedsearch/橋口五葉/2084006148/

7. アルフォンス・ミュシャ – アール・ヌーヴォーの象徴

アルフォンス・ミュシャ(1860年-1939年)は、チェコ出身でフランスを中心に活躍したアール・ヌーヴォーの巨匠です。星や宝石、花などをモチーフにした女性像や、洗練された曲線美によって特徴づけられています(※16)。

1894年、サラ・ベルナール主演の舞台「ジスモンダ」のポスターが大成功を収め、アール・ヌーヴォーの象徴的存在へと押し上げました。代表作には「四季」、「黄道十二宮」、「ジョブ」などがあり、主にリトグラフ技法で制作され、商業ポスターやデザインワークで才能を発揮しました(※16)。

市場価値と人気の理由

ミュシャの作品は、生前作と没後作で価値が大きく異なります。19世紀末から20世紀初頭に制作された生前作は、限定部数や直筆サインの概念がなく、版と一緒にサインが摺られている程度です。生前作は数十万円台から100万円以上と高額で取引されますが、没後作品は数万円台になることが多いです(※17)。

ミュシャのリトグラフ作品は、オークション市場で平均落札価格が約1万6千円から2万円程度ですが、保存状態や制作時期によって大きく変動します(※18)。商業デザインから生まれた作品も多いため、一般の絵画と比べて手に入れやすく、入門者にも人気があります。

※16 日晃堂コラム「国内外の有名な版画作家11人の作品とその魅力を紹介」https://nikkoudou-kottou.com/blog/painting/15116 ※17 骨董品・美術品・絵画買取なら獏「アルフォンス・ミュシャの版画の買取」https://www.baku-art.co.jp/authors/new-alfonsmucha/ ※18 オークファン「ミュシャ リトグラフ」https://aucfan.com/intro/q-~a5dfa5e5a5b7a5e320a5eaa5c8a5b0a5e9a5d5/

8. パブロ・ピカソ – 20世紀美術の革命児

パブロ・ピカソ(1881年-1973年)は、スペイン出身で20世紀美術において最も影響力のある芸術家の一人です。キュビスムの創始者として知られ、生涯にわたって多様なスタイルを探求し続けました(※19)。

ピカソは版画制作においても膨大な作品を残しました。生涯で版画だけでも約10万点を制作し、その種類は2,000点以上に及びます。第二次世界大戦前までは主に銅版画、1945年以降はリトグラフ、南仏移住後の1960年前後にはリノカット技法に取り組み、最晩年は再び銅版画に回帰しました(※20)。

市場価値と投資対象としての魅力

ピカソの版画作品は、状態や技法、モチーフによって価格が大きく異なります。オークション市場では平均落札価格が約1万7千円程度ですが、直筆サイン入りで人気図柄の作品は数十万円から1,000万円を超える高額査定となることもあります(※21)。

ピカソは「ブルーチップアート」として評価されており、業績が高く評価され、価値が長期にわたり安定している、投資家やコレクターにとって安全で有望な資産価値を持つ作品とされています。市場での経済的価値が安定していて、時間の経過とともに価格が上昇する可能性が高いと考えられています(※22)。

※19 アート買取協会「パブロ・ピカソ買取」https://www.artkaitori.com/artists/pablo-picasso/ ※20 オロチリトグラフィー「パブロ・ピカソ」https://orochi-lithographie.com/collections/pablo-picasso ※21 Yahoo!オークション ピカソ リトグラフ 版画 落札相場 https://auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/closedsearch/ピカソ リトグラフ/2084006148/ ※22 翠波画廊「ピカソ作品販売」https://www.suiha.co.jp/artists/century-masters/pablo_picasso/

9. マルク・シャガール – 愛と幻想の版画世界

マルク・シャガール(1887年-1985年)は、ロシア(現ベラルーシ)出身でフランスで活躍した画家で、「愛の画家」とも呼ばれています。最愛の妻・ベラへの愛や結婚をテーマとした作品を多く制作しました(※23)。

シャガールは版画制作においても多作で、リトグラフを中心に1,000種類以上の作品を残しています。第二次世界大戦後は、ステンドグラスや版画などを中心に創作活動を行い、「ダフニスとクロエ」や「サーカス」シリーズは、本人サインが入っていないリトグラフでも高額買取の対象となっています(※23)。

代表作「エルサレムウィンドウ」シリーズは、イスラエルのユダヤ教会に描いたステンドグラスの下絵で、旧約聖書に出てくるイスラエル12部族を描いた作品です(※23)。

市場価値とコレクション性

シャガールの版画作品は、日本国内で非常に人気が高く、オークション市場では平均落札価格が約1万3千円から2万円程度で推移しています(※24)。小品の作品はサイン入りでも数万円からの査定となるケースもありますが、大判で花束やパリを描いた人気作品は200万円を超える査定額となる作品もあります(※23)。

バブル期と比べて価格は落ち着いた印象ですが、依然として売買が活発な作家の一人です。特に、シャガールらしい青色が多く使われた作品や、宗教的なテーマを持つ作品高額で取引される傾向があります(※25)。

※23 アート買取協会「マルク・シャガール買取」https://www.artkaitori.com/artists/marc-chagall/ ※24 オークファン「リトグラフ シャガール」https://aucfan.com/intro/q-~a5eaa5c8a5b0a5e9a5d520a5b7a5e3a5aca1bca5eb/ ※25 骨董品・美術品・絵画買取なら獏「マルク・シャガール 版画の買取」https://www.baku-art.co.jp/authors/new-marcchagall/

10. アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック – ポスター芸術の革新者

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864年-1901年)は、フランス出身の画家で、ポスト印象派やアール・ヌーヴォーなどの芸術運動に貢献しました。19世紀後半のパリ、特にモンマルトル地区のナイトライフを独自の視点で捉え、生気に満ちた社会風景を描き出しました(※26)。

特にポスターアートの分野で革新的な作品を残し、「ムーラン・ルージュ」などのキャバレーのために制作したポスターで広く知られています。これらの作品はパリの大衆文化に大きな影響を与え、石版画を芸術の域にまで高めました(※27)。

代表作には「ムーラン・ルージュ・ラ・グーリュ」(1891年)「ディヴァン・ジャポネ」(1893年)「マルセル・ランデール嬢」(1895-1896年)などがあり、大胆な構図や色使いが特徴です(※26)。

市場価値と人気の理由

ロートレックの作品は、その革新性と希少性から高く評価されています。世界中で人気が高く、現存数が大変少ないため、オリジナルの石版画は入手が困難です。また複製が非常に多いため、オリジナル作品を見分ける専門知識が必要とされます(※27)。

市場では数万円から数十万円の価格帯で活発に取引されていますが、100万円以上の取引事例も多くあります。ロートレックの作品には日本の浮世絵の影響も明確に見られ、その技法をポスターや版画に応用した点も、評価を高める要因となっています(※26)。

※26 日晃堂コラム「国内外の有名な版画作家11人の作品とその魅力を紹介」https://nikkoudou-kottou.com/blog/painting/15116 ※27 トゥールーズ・ロートレック│リボリアンティークス https://rivoli-antiques.com/category/lautrec/

版画作品の資産価値を見極めるポイント

版画作品を資産として考える際、いくつかの重要な評価ポイントがあります。これらを理解することで、適切な投資判断ができるようになります。

エディション番号とサイン

リトグラフやエッチングなどのオリジナル版画には、エディションナンバー(限定枚数)と作者の直筆サインがあることが多いです。エディション番号は通常「10/50」といった形式で表記され、分母が総発行部数、分子がその作品の番号を示します。一般的に発行部数が少ないほど希少価値が高くなります(※28)。

また、作家の直筆サインの有無は価値に大きく影響します。版上サイン(版と一緒に印刷されたサイン)よりも、鉛筆などで直接書かれた直筆サインの方が高く評価される傾向にあります。ただし、19世紀末から20世紀初頭の作品は、現代版画のように限定部数や直筆サインという概念がない場合もあるため、制作時期による違いを理解することが重要です(※17)。

保存状態の重要性

版画作品の価値は保存状態に大きく左右されます。日焼けや経年による劣化、シミ、折れ線の有無などが査定のポイントとなります。特に版画は紙を使用しているため、湿度や紫外線の影響を受けやすく、適切な保管が必要です(※28)。

保存状態が良好な作品は高額査定の対象となりますが、状態が悪いと大幅に価値が下がります。普段から高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所で保管することが重要です。また、査定前にはホコリを丁寧に落とすことで、より正確な評価を受けられます。

真贋の見分け方

版画市場には贋作も少なくありません。特に人気作家の作品ほど偽物が出回りやすい傾向にあります。真贋を見分けるポイントとして、以下の点に注意が必要です。

まず、版画の技法と時代背景を理解することです。例えば、生前作と没後作では制作方法や特徴が異なります。生前作は作品の古さや、限定部数の概念がないことが特徴です。一方、没後作品は限定部数と直筆サイン(版元や摺師など)が書かれていることが多いです(※17)。

また、来歴や付帯品も重要な判断材料となります。購入先の証明、美術館への貸出記録、図録への掲載履歴などがある作品は、鑑定書が付帯していなくても査定できる場合があります。購入時に保証書が付帯する作品もあるので、大切に保管しましょう(※29)。

高騰しやすい作家の特徴

版画作品の中でも、特に価値が上昇しやすい作家には共通の特徴があります。

第一に、国際的な評価を受けている作家です。吉田博のように、近年海外で再評価が進んでいる作家の作品は、価格が急上昇する傾向にあります。海外コレクターからの需要が高まることで、国内市場でも価格が連動して上昇します(※12)。

第二に、作品数が限られている作家です。橋口五葉のように、早世により作品数が極めて少ない場合、希少性から常に高い需要が維持されます(※15)。

第三に、「ブルーチップアート」として認められている作家です。ピカソのように、長期にわたり価値が安定し、時間の経過とともに価格が上昇する可能性が高いと評価されている作家の作品は、投資対象として魅力的です(※22)。

※28 ヒカカク「パブロ・ピカソ絵画の価値・買取相場」https://hikakaku.com/blog/all-category/painting-works-of-art/2900/ ※29 アート買取協会「アルフォンス・ミュシャ作品の価値と買取相場」https://www.artkaitori.com/column/alphonse-mucha-souba/

版画作品を収集する際の注意点

版画作品の収集を始める際、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

購入先の選び方

版画作品を購入する際は、信頼できる購入先を選ぶことが最も重要です。専門のギャラリー、老舗の画廊、実績のあるオークションハウスなど、確かな鑑定眼を持つ販売者から購入することをお勧めします。

特に高額な作品を購入する場合は、作品の来歴や保証書の有無を確認しましょう。また、返品や交換に関するポリシーも事前に確認しておくことが重要です。インターネットオークションで購入する場合は、出品者の評価や取引実績を慎重にチェックし、可能であれば実物を見てから購入することをお勧めします。

相場の調べ方

版画作品の適正価格を知るには、複数の情報源を参照することが重要です。オークションサイトの落札履歴、専門ギャラリーの販売価格、美術品買取業者の査定額などを総合的に判断します。

Yahoo!オークションやオークファンなどのサイトでは、過去の落札価格を検索できるため、市場相場を把握する際の参考になります。ただし、オークション価格は作品の状態や時期によって大きく変動するため、複数の取引事例を確認することが重要です(※2)。

また、同じ作家の作品でも、制作年代、技法、モチーフ、保存状態によって価格が大きく異なります。特に初摺りか後摺りか、サインの有無、エディション番号などが価格に影響するため、これらの要素を総合的に判断する必要があります。

保管方法のポイント

版画作品は紙を基材としているため、適切な保管が資産価値の維持に不可欠です。以下のポイントに注意しましょう。

まず、温度と湿度の管理です。理想的な保管環境は、温度18~22℃、湿度45~55%程度とされています。高温多湿は紙の劣化やカビの原因となるため、避ける必要があります。

次に、光による退色を防ぐことです。直射日光はもちろん、蛍光灯の光も長期的には作品にダメージを与えます。展示する場合は、UVカットガラスを使用した額装を検討しましょう。保管時は、暗所で保存することが望ましいです。

さらに、適切な額装も重要です。作品と額のガラス面が直接接触しないよう、マットを使用することで、湿気による紙の波打ちや、ガラスへの張り付きを防ぐことができます。また、酸性の台紙や接着剤は紙を劣化させるため、保存用の中性またはアルカリ性の資材を使用することが推奨されます。

詳しくは以下の記事もご参照ください。 関連記事: 美術品購入時の注意点

まとめ – 版画作家の作品と向き合うために

版画は、複製芸術でありながら、各作品が持つ独自の価値と魅力によって、絵画と同様に高く評価されています。本記事で紹介した10人の版画作家は、それぞれが独自の技法と表現方法で、版画芸術の発展に大きく貢献してきました。

日本の伝統的な浮世絵から、大正・昭和期の新版画運動、そして西洋のリトグラフやポスター芸術まで、版画の世界は多様性に富んでいます。葛飾北斎や歌川広重のような江戸時代の巨匠から、棟方志功や吉田博といった近代の革新者、さらにはミュシャやピカソなど西洋の巨匠まで、それぞれが時代と文化を超えて愛され続けています。

版画作品を資産として考える場合、エディション番号やサインの有無、保存状態、真贋の見極めなど、複数の要素を総合的に判断する必要があります。また、購入先の選定や適切な保管方法も、作品の価値を維持・向上させる上で重要です。

近年、版画市場は国内外のコレクターから注目を集めており、特に海外での日本の新版画人気や、西洋の名作リトグラフへの投資需要の高まりにより、市場が活性化しています。適切な知識を持って作品を選び、大切に保管することで、版画は美術的な価値とともに、資産としての価値も享受できる魅力的な分野です。

版画作品との出会いは、単なる投資対象を超えて、芸術への理解を深め、生活に豊かさをもたらしてくれます。本記事が、版画作家とその作品への理解を深める一助となれば幸いです。